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毎年、九州では
遠くの海や大地から風に運ばれてきた水分が
雨となって数日間降ります。
それはあなたの傘に落ち、
福岡の土に染み込み
そして山々の上に霧となって
夏の空気の湿気として残ります。
それはあなたが感じるずっと前から、
この水分はすでに旅をしてきました。
あるものは大地を超え、湾の上を漂い、山を超えて
インド洋から来ました。
またあるものはゆっくりと暖かい海流に乗って
大西洋から来ました。
これらの流れは二度と同じ形で
九州に届くことはありません。
穏やかに降り続く年もあれば、
川や都市を圧倒するような豪雨になる年もあり、
毎年違った雨を降らすのです。
水が辿る遠い道のりを追い、
毎年の雨を形づくる
生きた繊細なシステムを探しにいきませんか。

🌧️ 梅雨
東アジアで6月から7月にかけて発生する季節的なモンスーンの雨を指し、水資源や農業にとって重要な長雨をもたらす一方で、弱い年は干ばつを、強い年は洪水を引き起こす。
⛩️九州
日本の主要な島の中で最も南西に位置する島で、年間降水量の大部分が梅雨の時期に集中する。2018年7月と2020年7月には、記録的な豪雨に見舞われ、深刻な洪水や土砂災害が発生した。

雨となる水分はどこから来るのでしょうか?
九州⚲における降雨は、インド洋⚲ 、太平洋⚲ 、東アジア大陸⚲ 、東シナ海、黒潮地域⚲などの海域で蒸発した水分が集まってできた複合体です。
これらの海域の水分は、インド洋(47.7%)と太平洋(26.2%)から運ばれてくる水分を合わせると、梅雨期の豪雨の総降水量のほぼ4分の3を占めています。
🚠 インド洋から
陸地を横断し、湾の上空を漂い、山々を登る長い旅
南アジアの陸地は周囲の海洋よりも早く加熱するため、海から風を引き込みます。これらの南西風はインド洋を横断しながら水分を集めていきます。夏には、この循環が長期にわたる熱の蓄積と放出によって駆動される巨大な「モンスーンエンジン」として機能します。
この水分の多くはインド⚲に雨として降りますが、いくつかの流れは東に向かってベンガル湾⚲へと向かいます。ここでは、激しい対流が繰り返し空気を上昇し、雨を降らせ、水蒸気を循環させながら、より長い旅への準備が整えられます。
その後、この水分はモンスーンの南西風に乗って、南シナ海⚲ 、東アジア大陸、東シナ海を超えて運ばれ、九州の梅雨期の豪雨の総降水量の約半分(47.7%)を担っています。

⛵太平洋
暖かい海流にゆっくりと漂う
北太平洋亜熱帯高気圧(NPSH)の持続的な影響下で、西太平洋やフィリピン海⚲の上空では暖かく湿った空気が蓄積されます。この水分は、大気の低層でゆっくりと持続的に移動します。
高気圧の循環に導かれたこの流れは、黒潮や東シナ海を越えて九州東部へと流れ込みます。これは梅雨期の降水量の平均28.6%を占め、持続的な降雨に必要な湿度とエネルギー源を提供しています。

🌧️ 梅雨前線
湿気が出会う場所
九州の上空で、これらの二つの旅が交差します。まず太平洋からの湿った空気が低層部で徐々に増加し、その後、しばしば突発的に、梅雨前線上の低気圧に押し上げられる形でアジアモンスーン(AM)の湿った空気が上空から流れ込みます。
豪雨のピークに達すると、これらの気団は垂直方向に重なり合い、低層の太平洋の水分が下から対流を支え、中層のインド洋からの空気が上から上昇気流と凝固を強めます。
このような湿った空気は大陸や海を越え、何千キロメートルもの距離を移動し、何度も上昇と下降を繰り返し、層を作り雨となるのです。

📊年ごとの変動
季節の鼓動
これらの水分源の相互作用は、梅雨期(2004年~2023年、6月~7月)を通して独特のリズムを生み出しています。
過去20年間の分析から、降雨の強さが年によって大きく変化することがわかります。
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💧降雨量が少ない年:2004年(344.6 mm)2005年(451.1 mm)
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💧💧平年並みの年:2019年(711.0 mm)2023年(693.7 mm)
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💧💧💧降雨量が多い年:2020年(1191.3 mm)2012年(1046.2 mm)これらの年には、中層のアジアモンスーン(AM)の湿気が総降雨量の半分以上(51.4%)を占め、そのうち80%以上はインド洋からの湿気でした。
豪雨の時には、アジアモンスーン(AM)の影響はさらに大きくなり(57.8%)、インド洋だけで約半分(48.4%)を占めます。北東へと運ばれたこの暖かく湿った空気は梅雨前線に流入し、凝結を直接的に促しながら中層大気の不安定性を高めます。その結果、対流は富士山のおよそ1.5倍の500hPa超える高さまで発達し、多雨年における九州の豪雨を引き起こします。
2018年7月6日の豪雨では、わずか1日で116.8mmの雨が降り、
その年の梅雨期全体の降水量(827.4mm)の14.1%に相当します。
さらに2018年7月5日から7日のわずか3日間で、合計253.7mmが記録され、
梅雨期全体の約3分の1(30.7%)を占めました。
この一連の豪雨について、気象庁は「これまでに経験したことのないレベルの大雨」と表現しています。

気候変動は緊急性の高い地球規模の課題ですが、
気候システムに対する一般的な理解は十分とは言えません。
データだけでは、地球規模のプロセスの相互関係や、
私たちの日常とどのようにつながっているのかを
十分に伝えることはできません。
「Moisture Commons」は、東京大学生産技術研究所・吉村研究室との協働により開発され、水分の起源と輸送に関する最新の研究を可視化することで、私たちが共有する大気というコモンズへの理解を深めることを目指しています。
このプロジェクトは継続的な取り組みとして、グローバルな規模へと拡大を続けています。気候変動に関するコミュニケーションをより魅力的で分かりやすいものにするため、新たな可視化の手法や体験的なアプローチを探索しています。
地球規模の水の循環とその公共的な性質を明らかにすることで、人々の意識を高め、気候変動対策における国際的な協働を促します。
メンバー: Ivy Wentan Gao, Mariia Garaeva, Xiaoyang Li, Kei Yoshimura, and Hyunjung Kim
参考文献: Li, X., Kawamura, R., Ichiyanagi, K., & Yoshimura, K. (2025). Interannual variability of moisture sources and isotopic composition of Meiyu-Baiu rainfall in southwestern Japan: Importance of Asian monsoon moisture for extreme rainfall events. Weather and Climate Extremes , 48, 100754. https://doi.org/10.1016/j.wace.2025.100754
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