
近年、自家用車の自動運転技術は急速に進化し、日本や欧米ではSAE(自動車技術者協会)によるレベル3の条件付き運転自動化が承認・導入されるようになりました。レベル3の車両は、特定の条件下でハンズフリーかつアイズオフの運転を可能にしますが、ドライバーは通知を確認し、必要に応じてすぐに操作を引き継ぐ準備をしておく必要があります。この技術は利便性を向上させる一方で、ドライバーからの信頼を得ることが課題となっています。
この課題に対応するため、東京大学DLXデザインラボは、韓国科学技術院(KAIST)の産業デザイン学科と協力し、ドライバーとレベル3自動運転車の間に信頼関係を築くための内部ヒューマンマシンインターフェース(iHMI)を設計・開発しました。このコラボレーションにより、「Auze(オーズ)」と「MIRAbot(ミラボット)」という2つのプロトタイプが開発されました。Auzeは車内で使用するロボット型アクセサリー、MIRAbotはバックミラー型のドライビングアシスタントです。
このプロジェクトでは、KAISTの学生4名がDLXデザインラボの柏スタジオでインターン生として参加し、2023年と2024年に柏オープンキャンパスでプロトタイプの公開デモとユーザースタディを実施しました。さらに、2024年のHRI(Human-Robot Interaction)およびCHI(Computer-Human Interaction)国際会議で研究成果を発表し、2025年のCHIでも発表を予定しています。
本研究では、探索的デザインアプローチを採用し、東京大学柏IIキャンパスの4D Spaceにおいて、14名のデザイナーによるアイデアワークショップからスタートしました。このワークショップでは、ドライバーを支援するリアビューミラー型アクセサリーのコンセプトが生まれました。その後、アイデアのブラッシュアップ、試作、専門家からのフィードバックを経て、Auzeが開発されました。Auzeはロボットの動きと音声を活用し、既存のハンドオーバーシステムと連携することで、安全な運転の引き継ぎをサポートします。(動画はこちら: https://www.youtube.com/watch?v=mY6wbhw1sRI)
さらに、このコンセプトを発展させ、MIRAbotを開発しました。MIRAbotは通常のリアビューミラーとしての機能を持ちつつ、インタラクティブなアシスタントとしても活躍します。手動運転・自動運転の両方に対応し、移行時には音声や動作を用いてドライバーの注意を促し、スムーズな運転の引き継ぎを支援します。(動画はこちら: https://www.youtube.com/watch?v=w5Xgp1wnp9g&t=17s)
AuzeとMIRAbotを通じて、私たちは自動運転技術を日常の運転に自然に溶け込ませることを目指しています。これにより、レベル3自動運転車への信頼を高めるだけでなく、新技術の適応に不安を感じる方々にも、より快適で安心できる運転体験を提供できると考えています。
この研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(課題番号: 22H00246)の支援を受けています。
研究チーム
東京大学 DLXデザインラボ
金 賢貞(Hyunjung Kim)
フィッシャー・マックス(Max Fischer)
木内 笙太(Shota Kiuchi)
小田 久美(Kumi Oda)
本間 健太郎(Kentaro Honma)
ペニングトン・マイルズ(Miles Pennington)
KAIST 産業デザイン学科
チョン・ジョンイク(Jongik Jeon)
ピョ・スンファ(Seunghwa Pyo)
キム・イェナ(Yena Kim)
イ・グムジン(Geumjin Lee)
イ・チャンヒ(Chang Hee Lee)



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