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​都市と
ネズミ

「都市とネズミ」は、1年にわたる観察から見えてきたネズミたちの知られざる日常をそっとのぞき見る展示です。

 写真家・原啓義(はら ひろよし)氏による写真とともに、

3つのインタラクティブ・インスタレーションを通して、

ネズミを偏見のない目で捉え直す視点を来場者に届けます。
 

科学、デザイン、そしてビジュアル・ナラティブが交差する本展示では、

これまで「汚い害獣」として見られてきたネズミのイメージに揺さぶりをかけ、

新たな可能性を探ります。


もしかすると、ネズミは私たちが思い込んでいたような

「不潔な存在」ではないのかもしれません——。


このプロジェクトは、人と野生動物が共に生きられる、
持続可能な都市のあり方を描き出す試みでもあります。
恐怖や嫌悪ではなく科学的な視点から、

都市とネズミの関係を見つめ直し、共に暮らす新しいかたちを模索します。

なぜネズミ? 

RatGraph1

Timm, R. M. (n.d.). Norway rats. DigitalCommons@University of Nebraska - Lincoln.

RatGraph2

Timm, R. M. (n.d.). Norway rats. DigitalCommons@University of Nebraska - Lincoln.

都市で増加するネズミ

気候変動、急速な都市化、人口増加といった要因が重なり、世界中の都市でネズミの数が増え続けています。
これまで“例外”とされていた東京でも、コロナ禍以降ネズミに関する苦情が急増。2020年から2023年の間で、その件数は6,322件から7,726件へと22%増加しました。
このデータは、従来の駆除中心の対策がもはや効果を発揮していないことを示しており、特に人口密度の高い都市においては、より根本的な見直しが求められています。

駆除から共存へ

ネズミを完全に都市から排除するのは、現実的ではありません。
これは、長年にわたり害獣駆除の業界でも認識されてきた事実です。
ある研究によれば、駆除によって一時的にネズミの数を減らすことはできても、すぐに元の水準に戻ってしまうことが多く、終わりのない駆除のサイクルに陥ってしまいます。
つまり、現行の方法では根本的な解決にはつながらないのです。
では、どうすればよいのでしょうか?
その研究は、効果的なアプローチとして「都市環境そのものを改善すること」を挙げています。
ポイ捨てや適切に管理されていないごみ収集など、人間の行動こそが、ネズミの繁殖を助長しているのです。
ネズミの存在を前提に都市を設計し、環境のバランスを保つライフスタイルを育むこと——
そこに、より持続可能な未来へのヒントがあるかもしれません。

乗り越えるべきハードル

こうした変化を阻む大きな壁があります。
それは、ネズミに対する根強い偏見です。
「汚い」「怖い」「不快」——そうした印象が私たちの意識に刷り込まれ、世論や政策にも大きな影響を与えてきました。
このプロジェクトでは、そうした偏見に正面から向き合います。
デザイン、ネズミの生態学、ビジュアル・コミュニケーションを融合させた展示を通して、ネズミを見つめ直し、より包括的で柔軟な都市の未来を描きます。
科学に基づいた展示やビジュアル資料が、好奇心を呼び起こし、共感を育て、固定観念を揺るがす。
そんなきっかけとなることを目指しています。

挑戦的なケーススタディ

このプロジェクトで最初に取り上げたのが、ネズミです。
しかし、私たちのライフスタイルが影響を与えてきた生きものは、ネズミだけではありません。
気候変動や環境の悪化が進む中で、「自然とどう共に生きるか」という問いはますます重要になっています。
身近だけれども誤解されがちな存在——ネズミ。
彼らとの向き合い方を見つめ直すことで、他の生物たちへのまなざしにも変化が生まれるかもしれません。
本プロジェクトは、そんな種を超えた共生の可能性に目を向けるきっかけになればと願っています。

プロセス

東京各地でのネズミ撮影と観察

プロジェクトは、東京都内ネズミの大量発生地で観察から始まりました。

巣穴の内部には内視鏡カメラを設置し、観察を実施
夜間の動きを赤外線カメラで撮影し、
ネズミの行動を記録

巣穴の発掘調査

観察を続けていたある日、大学の管理部門からゴミ集積所周辺でのネズミ駆除作業の通知がありました。
私たちはこれを機に、該当エリアの巣穴を慎重に掘り起こし、その構造を調査しました。
得られたデータをもとに3Dモデルを制作し、バーチャル空間でその内部を探索できる形に再構築しました。

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​考察


​“ネズミは都市という厳しい環境で
必死に生き延びようとしている、
一つの生命です”

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”ネズミはネズミで、人間は人間で、
生きていけばいいと
思っている”

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“か弱く見えても、確かに生き続ける存在たちの物語”

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"ファインダー越しに眺めるネズミたちは、野生で見かける小動物と変わらない”

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”膝の上に小さなネズミの落書きのようなタトゥーを自分で彫りました”

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"多くの人が彼らに関心を持たないことを、ずっと不思議に感じてきました”

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​展示

​Gwangju Design Biennale

韓国、光州

2025年8月30日〜11月2日

​科学と芸術の丘ー Matsudo International Science Art Festival

日本、千葉

2025年10月24〜26日

東京大学キャンパス公開

日本、東京/千葉

​2025年5月30〜31日/11月24〜25日

This work was supported by Gaisan Yokyu (UTokyo Design Hub) and the Special Fund of the Institute of Industrial Science, The University of Tokyo.

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